2018.03.02

【特別講演録】日本の起業の本流、それが“ベンチャー型事業承継”(レオス・キャピタルワークス 藤野氏)

NEXT INNOVATION Conference
GO beyond borders! アトツギよ、前提を変えろ!「ベンチャー型事業承継のススメ」

特別講演「二代目、三代目よ、イノベーションを起こせ」

 

【登壇者】
レオス・キャピタルワークス株式会社
代表取締役社長・最高投資責任者
ひふみファンドマネージャー
藤野 英人 氏

 

国内・外資大手投資運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年レオス・キャピタルワークスを創業。株式投資信託「ひふみ投信」「ひふみプラス」「ひふみ年金」を運用し、シリーズ3本の合計運用資産総額は6000億円を超える。投資教育にも注力しており、JPXアカデミー・フェロー、明治大学商学部兼任講師を務める。一般社団法人投資信託協会理事。近著に『ヤンキーの虎-新・ジモト経済の支配者たち』(東洋経済新報社)『投資レジェンドが教える ヤバい会社』(日経ビジネス人文庫)。

 

 

講演の冒頭で、「そもそも日本の上場企業の初代経営者のうち、多くが二代目、三代目。事業承継してからイノベーションを起こし、大きく成長した企業は数多い」と語った藤野氏。投資家であると同時に起業家でもある自身の経験からあみだした、イノベーションのヒントや地方創生のカギを披露し、日本の経済成長を支えていくべき二代目、三代目にエールをおくった。

 

 

社長からヒラ社員、そして再び社長に

日本株のファンドマネージャーとして国内外の大手運用会社で働いていたのですが、2003年、36才のときに独立。レオス・キャピタルワークスを創業しました。

 

当初は順風満帆で、未上場でしたが4年後には株式の評価時価が30億円となり、私はその70%を保有する大株主に。それが、2008年のリーマン・ショックで破綻寸前に追い込まれます。

当時は念願だった自分たちの投資信託「ひふみ投信」を立ち上げたばかりで、ちょうどそのコストが経営を圧迫していたのです。「どうすることもできない」と切羽つまったときにいまの親会社が引き受けてくれ、倒産の危機はギリギリ免れました。ただ、私は1株1円で持ち株を放出。1年前に21億円だった資産が、たった3240円になったのです。

 

それから社長を外され、ヒラ社員として電話番をする毎日。

 

なんの希望ももてず会社を辞めようと思って、ひふみ投信立ち上げ時にスカウトして入ってもらったあるメンバーに報告したんです。彼女は楽天証券創業者の一人だったんですが、その女性は涙を流して「理想の投資信託をつくるという夢はどうしたんですか?」と訴えてきた。

 

確かに、理想の投資信託をつくるという夢にはまだチャレンジしきれていない。

「よし、やろう」と開き直れたことが大きな転機でしたね。

 

会社経営には、「株」「従業員の信頼」「顧客の信頼」をどれだけ保持するかが重要になります。

 

私はリーマンショックで株を失いましたが、立ち上げたばかりのファンドに関してはほとんど解約がなく、ファンドマネージャーの腕に対する顧客の信頼が100%残っていました。

 

開き直るって大事ですね。その後がんばったらみんながついてきてくれ、また社長に戻ることができました。

 

イノベーションは「穴を探して穴を埋めること」

新しい事業を起こすことは、「穴を探して穴を埋めること」だと思っています。つまり、社会的課題を発見し、それを実行すること。

 

例えば、私の場合はファンドマネージャーとして、野村系、JPモルガン系、ゴールドマン・サックス系の投資運用会社で働きましたが、日本の公募投資信託には100兆円もの市場があるのに、長期投資の日本株ファンドや、米国のようなブランドファンドがないことをずっとおかしいと思っていました。それが「穴」です。

 

業界内の人は、昔からある穴が風景に見えるので気づかない。業界外の人は、穴をみつけられても埋め方を知らない。私は100兆円の市場に巨大な穴を見つけ、私ならそこを埋めることができると思って会社を設立しました。

 

穴を埋めるために、まず私たちは「ひふみ投信」という、ブランドとして何より大切な、誰もが覚えやすいネーミングを考案しました。そしてマーケティングについても、まさに必死で考えました。

 

いまや「ひふみ投信」のシリーズは、顧客数40万人、運用残高が6000億円を超える日本最大規模の株式投資信託になり、ネット証券でも常にトップの売上げを誇ります。再起から9年をかけ、日本の大手競合企業も太刀打ちできない圧倒的なブランドに成長したのです。

 

 

日本はビジネスチャンスの宝庫

 

私は、ウォーターダイレクト(現プレミアムウォーターHD)という天然水宅配会社の創業者でもあるんですが、この夏の売上げが業界ナンバーワンになりました。世界ではウォーターサーバーの水が飲まれているのに、創業当時の日本は、水に対する安全神話が根強くて浄水器やペットボトルの飲料水が中心でした。ここにも「穴」があると思い、市場が伸びると確信したのです。

 

私はライバルを徹底的に研究し、使い終わったボトルを回収ではなく再生ゴミとして捨てられるものにし、物流を半分に減らすというイノベーションを起こします。それが、多くの人がサーバーから天然水を飲むきっかけとなり、「日本は水がきれいだから天然水の宅配はいらない」「うちにはサーバーを置く場所がない」と言われていたネガティブな状況をくつがえしたのです。

 

このように、みんなが「ダメだ」「無理だ」と言っている社会的課題こそ、ベンチャーが解決すべきこと。「これはダメだ」という言葉を聞いたら、それが宝の山に見えなくてはいけない。つまり、いまの日本はビジネスチャンスの宝庫なんですね。ベンチャー型事業承継を公的機関がバックアップしてくれるなど、やる気のある人にはすばらしい環境も整ってきました。1円で株式会社がつくれ、資金調達を頼めるところもあるというチャンスに恵まれた時代です。

 

地方創生のカギは「ヤンキーの虎」

私が書いた本、『ヤンキーの虎 ー新ジモト経済の支配者たち』は、出版後に「なんでオレのこと知ってたの?」という手紙が続々届いたおもしろい本です。

 

「ヤンキーの虎」とは、地方を本拠地に、地縁血縁などのネットワークをいかして多角経営ビジネスに取り組む経営者のこと。「マイルドヤンキー」を取りまとめるリーダー、という意味です。

 

彼らは建設業などの地場産業を軸に、コンビニや飲食店、介護、中古車販売など、地域の生活に根ざした事業をコングロマリット化で拡大して成功します。ヤンキーの虎はあらためて見回してみると日本中にたくさんいて、出自はたいてい二代目、三代目といわれる「事業継承型」か「成り上がり型」。

 

事業自体に新規性がないためにこれまで経営者として過小評価されてきたヤンキーの虎ですが、実は彼らが地方創生のカギだと私は考えています。

 

地方創生が失敗に終わるのは、そもそも商売をしたことがなく、リスクをとることが嫌いな地方エリートが巨額のお金を動かしていることが原因。

 

地方創生には携帯ショップや飲食店などをがんがんつくって儲けているヤンキーの虎を巻きこまないといけない。彼らが成功しているように、地方にもビジネスチャンスがたくさん埋もれていることに気づいてください。

 

(文:花谷知子)

アトツギベンチャー編集部

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