2017.12.28

【インタビューvol.11】ロボティクス家具で、めざすは世界の医療介護市場(株式会社I&C/佐田 幸夫氏)

大学卒業後、総合リフォーム会社に営業職として入社。

2ヵ月後にトップセールス、3ヵ月後には支店長に抜擢され、マネジメント全般を経験。その後、岡山の実家が営む木製建具家具製造会社に戻ったものの、2008年に大阪で株式会社I&Cを設立。

 

オーダーメイド家具の製作と商業施設の内装設計・開発を主軸に、地震から家を守る耐震収納家具「TAORANGER(タオレンジャー)」など、既存のインテリア製品に新しい機能や価値を加えた商品を開発してきた。

 

現在は、2013年から研究開発を続ける電動昇降家具ブランド「Robotics design Furniture LAPシリーズ」でIoT家具市場でのビジネスを本格展開している。2017年には、デンマークに現地法人とデザイン&マーケティングセンターを設立。また、ニューヨークにI&C AMERICA INC.とプレゼンテーションショールームを開設するなど、積極的に海外進出をはかっている。

 

Q 電動昇降家具の市場として、医療介護業界に着目したのは?

A 特別支援学校向けのオーダーメイド家具の案件がきっかけでした。

施設の子ども達が使う備品は、機能性やデザイン性が十分でなく、価格も高いものがほとんど。子どもの成長に合わせて、たった10㎝の昇降機能が付く実習用の調理台が350万円もすることに驚きました。

 

「もっと機能的で安価な製品が家庭にあれば、子ども達の自立支援や家族の負担軽減につながるのでは」と、世界中の電動アクチュエータメーカーから部品を取り寄せたら、1ヵ月後には40㎝の昇降が可能な試作品が60万円でできたんです。

 

そこで、本当に必要な機能を見極めて量産化すればもっと安くできる。そして、小さな子どもから高齢者、障害のある方も使える包括的なデザインのものづくりができれば、世界ブランドの商品がつくれるんじゃないかと考えました。

この事業は、ロボティクスやIoT、センシングなどの先進技術を搭載し、デザイン性も兼ね備えた洗面台を皮切りに、「Robotics design Furniture LAPシリーズ」として発展させました。現在はインテリア業界と医療介護業界がクロスオーバーする市場をターゲットに、商品ラインナップの拡大に取り組んでいます。

 

Q 28才で岡山の家業に戻った背景は?

A それまで親から継げと言われたことはなく、姉の「手伝ってあげて」という言葉で戻りました。

 

母の体の不調など、理由はいろいろあったんですが、今から思うと、会社は窮地に立たされていたわけでもなく、父親は世代交代する気がないほど元気だったので、単に私に帰ってきてほしかっただけだと思います(笑)

 

子どもの頃、自宅の横が工場だったので家具業界には親しみがありました。もともと独立志向があって経営に対する憧れもあり、実家に戻ることに抵抗はなかったですね。

 

まずは家業の仕事を覚えることから始め、積算、設計、製造、現場管理など、現場をいくつか経験して基礎的なことを学び、そこから新規開拓の営業を担当していましたが、家業の世界に閉じこもる発想はまったくなかったですね。

 

家業と離れた大阪で新会社を設立したのは、スピード感をもって新しいビジネスに挑戦する環境づくりとして必然だったから。機能性家具を開発していくうえで、家電やロボット、医療介護業界の最先端の情報が入ってくる拠点が必要でした。

 

一方で、耐震収納家具にしても電動昇降家具にしても、独自性の高い製品なので、試作品の開発ひとつとっても時間もコストもかかります。実家の家具工場だったからこそ、融通が利いたことは大きなアドバンテージだったと思います。

 

今では、すべての製品を岡山の工場でつくっているわけではありませんが、実家が得意な案件がきたら発注しています。うちのIoT家具製品は基本的に躯体が木製なので、私もしょっちゅう岡山の工場に足を運んで、現場の技術者と仕事をするんですが、現場の職人さんも、I&Cが持ち込む難易度の高い案件も楽しんでやってくれているようです。

 

将来的に、ひとつの会社になるのか、ホールディング会社にするのか、まだ決めてはいませんが、選択肢はいろいろあると思っています。

 

Q 前職の経験は活かされていますか?

A 大学時代はアマチュアのオートバイレースに夢中で、専門分野も資格もなかったので、営業職しかなくて。

大学卒業後は、急成長中の総合リフォーム会社で就職しました。

 

住設業界のベンチャーと呼ばれていた会社で、かなり過酷でしたが(笑)営業力はずいぶん鍛えられました。
入社2ヵ月でトップセールス、3ヵ月で支店長を命じられ、販売、人材育成、採用など、20代でマネジメント全般を学ぶことができました。

 

「有言実行」がモットーの会社だったので、目標を必ず達成させるという緊張感が常にありました。その会社の社長のモットーが「一心不乱の経営」。まずは置かれた環境で仕事に夢中になれという社風でしたね。

 

飛び込み営業で鍛えられたので、今では、どんな業界だろうが、どんな会社だろうが、臆することなく営業に行けるようになりましたし、自分がどれだけやったかが成果や評価につながること、失敗しても周りのせいにしないという考え方が身につきました。

 

子どもの頃に両親がいろんな経験をさせてくれたことも良かったと思います。

小学校低学年のときの新聞配達もその一つ。がんばって働いた分の対価をもらうことの意味を子どもなりに理解しましたから。そして時間通りに配達する、汚れないように工夫をするとか、ちゃんとしないと怒られるということも植えつけられました(笑)。

 

Q とはいえ、初めての海外展開。何から始めたのですか?

A 大阪市の「大阪トップランナー事業(※1.)」に採択されたことが大きかったんです。

※1. 大阪トップランナー事業: http://www.osaka-toprunner.jp/

 

海外進出の方法や営業戦略、商品開発のロードマップ作成など大まかなことを、担当の方が一緒に考えてくださいました。我々は木製の家具作りには精通してますが、金属のフレーム設計やセンシング、IoT、ロボット技術などは未知の領域。各界のキーマンを紹介してもらったことは大きな弾みになりました。

 

また、この事業で、デンマーク大使館へつないでいただいたご縁が、3年がかりで結実。当社のロボティクス家具がデンマークの国家プロジェクトに認定され、現地にも拠点を開設し、ヨーロッパ市場に本格的に参入します。

 

大阪府の「新分野・ニッチ市場参入事業化プロジェクト(http://www.pref.osaka.lg.jp/mono/sangakukan/nicchi-pj.html)」でも、担当の方が地道な営業を一緒にしてくださったことも、販路拡大や介護業界への開拓につながりました。

 

いま、ベンチャー企業は、国や地域から手厚い支援が受けられます。起業家なのか、中小企業の後継者なのかは問題ではありません。自分が志す事業を実現させるために、目の前にきたチャンスをひとつひとつ確実にものにすることが大切なんだと思います。

 

 


【会社情報】
株式会社I&C
〒542-0081 大阪府大阪市中央区南船場4丁目6−10
会社公式サイト:http://www.iandc-inc.jp/


<取材後記>

育った環境に少なからず影響を受けるんだなあと感じました。

僕自身も両親ともに商売をしている家系だったので、事業やることのかっこよさ、経営者という存在を幼少期からひしひしと感じ、いつか自分もと無意識のうちに思っていたことを思い出しました。

また、今までのインタビューでは業界団体に入り浸ることをあまり勧めないと言われてきましたが、所属した団体の海外事業に携わることによってできたつながり等を通じ、現在の海外進出などにも行かせているという話を聞き、どんな場でも自分の考え方、意識次第で有用に活用することができるという点を強く感じました。

 

 

(取材:西形達宗/写真:中山カナエ/文:花谷知子)

たつのり(西形 達宗)

たつのり(西形 達宗)

1994年生れ。実家は自動車販売修理業。大学院にて知的財産に関して研究。CtoC マッチングプラットフォームの新規事業関西支部立ち上げに参加後、当プロジェクトに参加。年齢は24、見た目は30代。 愛用のジレットフュージョンはプログライドフレックスボールパワー。

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