2018.11.29

【インタビューVol.23】お客さまに感動を届けたい!「三方良し」と「続ける」をモットーに花と食分野で奈良から世界へ。(株式会社日本総合園芸/中村 太郎 氏)

花や食品の宅配からスタートした日本総合園芸。最近では生産者とのコラボ商品の開発やブランディングなど、事業内容は多岐に渡っている。

 

 

Q お父様がつくられた会社ということですが、もともと継いでほしいと言われていたのでしょうか?

 

A いえ、全く。「好きなことをやれ」というスタンスでした。

 

子供の頃に花の市場に一緒に行ったり、忙しい時期は手伝いもしていたので家業は身近な存在ではありました。でも継ぐように言われたことはなかったですね。父は創業者だったのでとても苦労したとは思うけど、自分のしたいことで事業をしてきたというのもあったから僕に対しても「好きなことしたらええ」と思ってたんじゃないかと思います。

 

僕は僕で、海外でボランティア活動がしたいという気持ちがありまして。
奈良の高校を1年で辞めてしまって、アメリカの高校に留学したんです。最初こそ苦労しましたが、向こうの空気感が好きだったので、ずっとアメリカに住み続けたいと思っていましたね。でもテロやいろいろな事件があり「これからどう生きていくべきなんだろう?」とすごく考えたんです。そのときに、この父親の元に生まれたという自分の環境に意味を感じまして。「 継ごう!」と決心し、帰国しました。

Q 帰国後はすぐに会社に入られたんですか?

 

A 関東の大学を卒業してからすぐに入社しました。
外で経験を積んだほうが良いのでは?など、いろいろな意見がありましたが、早く役に立ちたかったんです。

 

それで、入社後は花や食品の仕入れをしたり、全国の生産者さんのところを回って仕入先を探したりしました。継いだのは2015年です。

仕入れは日本全国にとどまらず海外へも行ってます。花と食は自然相手の商売なんで、仕事のフィールドに国境がないのが良くて。トルコ、スリランカ、モーリシャス、オーストラリア、ドイツなど・・様々な場所の生産者さんと会ってきました。今はネットで情報が掴めてしまうので、現地に行かずに物だけを取り寄せる人も多いんです。でも商売は人と人のつながりでできること。だからまずは会うのが大切で、人と会うのが仕事だと思っています。会いたいと思う人がいたらどこへでもすぐに行っちゃうんです(笑)

 

 

Q 継いでから苦労されたことはありますか?
例えば先代との衝突や社員の方とのコミュニケーションの問題とか。

 

A それはなかったかな。もともと僕自身が彼らと一緒に働いてきた時間も長かったので、代が替わるまでには社員さんとも関係が出来上がっていましたし。

 

あと、会社の全員の仕事に目が行き届いているわけではないですが、なるべく気にかけています。皆に能動的に仕事をしてほしいし、そうしやすい環境を作るのが経営者である自分の仕事ですから。

 

特にうちは80人中70人は女性なので、女性が働きやすい環境にしたいと思っていて。皆それぞれ家庭を持っていたりするし、各々の事情があるのでまぁ大変ですよ(笑)
だから、週3勤務・週4勤務の人がいたり、柔軟性のある勤務体系もOKにしてますね。助け合ったりフォローし合えばいいし、少々の凸凹は補い合えばいいという考えです。

 

奈良県は県外就労率が全国1位ということもあり、雇用を確保する上では、地元で働きたい人のそれぞれの事情を考慮しなければいけないと思っています。

 

 

Q お話を伺っているとすごく楽しそうにお仕事をされている印象ですが、辛くなることや悩みは無いのでしょうか?

 

A 花も自然食品も感動産業。売る人もつくる人も感動しないと物事は成就しないと思ってます。
僕らの仕事はいろいろな人に会って感動に触れることができる仕事だから、多少しんどくても頑張れたんじゃないですかね。

 

それに、基本的に自然と触れ合うことが好きですし、仕入れでいろいろな人と出会えるのが嬉しいので、仕事とは思ってないんですよね。行く先々のおいしいお酒で乾杯できますし(笑)

 

あとは、後向きにならないようにしています。後向きな人がいると周りもどんよりしちゃうというか、負の連鎖みたいなものが生まれるでしょ。だから良くないと思っていて。今、花卉業界自体が変化の時期でもあって、いろいろと厳しい面もありますけど、花も食も感動を届ける仕事だから、人が人生を楽しもうとする限り、ゼロになることはないんです。

 

 

Q 自分の代で挑戦したいことはありますか?

 

A 流通のプロとして生産者さんとコラボレーションをしていい商品を作っていきたい、実際にもう始めています。

 

最近、愛媛の福岡正信さんの農園( https://f-masanobu.jp )とコラボしてマーマレードをつくりました。知り合ったデザイナーさんにパッケージをお願いして、グッドデザイン賞も受賞したんです。今後は海外の展示会にも出展予定です。そのデザイナーさんと農園の3代目社長(園主)と一緒に、農園のリブラディングを行っています。

 

今、6次化産業が注目されたりしていますが、つくる一流と売る一流がいると思っていて、やっぱりその両立は誰もができることじゃない。いいクオリティのものは簡単にはできないんです。
自分たちは長年売る側で流通に携わってきたので、その強みを生かして生産者さんをサポートしていきたいです。

 

あと、最近そのデザイナーさんを中心にスタートした「ノウフク」というプロジェクトに参画させて頂く事になりました( http://noufuku.jp )。農業と福祉をつなぎ、日本の食、経済、暮らしを元気にしていこうというもので、オンラインショップの窓口を弊社が請け負っています。10月にプレオープンしたばかりなので、こちらも浸透させていきたいですね。

 

 

Q 中村さんが働く上で大切にしていることはありますか?

 

A 「続けること」と、「三方良し」を常にめざしています。

 

関わる人が支え合って初めて成り立つのが商売だから、それぞれがうまくいっていたら、物事はより良い循環をすると思っています。自分だけじゃ何もできないですし。打算でガツガツ行くと良い付き合いは生まれません。従業員ともそうですし、相手が外国の人でも一緒。もともと親から「感謝やで」ということを言われて育ってきたので、その考えがど真ん中にあります。従業員や生産者さんたちに喜んでもらってこそ自分がいる、という気持ちは常に忘れずにいたいですね。

あとは、「続けること」が至上命題です。

 

世界を回る中で、続けることがいかに難しいかを改めて痛感してて。
ヨーロッパに詳しい人に聞いたのですが、イタリアとかはファスナー職人の家は代々ファスナー職人、皮は皮、という風に代々継ぐのが当たり前だそうです。だから最高のものがどんどんブラッシュアップされて良いものができるのだと。日本もそれぞれの場所で残すべき技術を守っていくことは大切だと思います。潰れてしまったら、今まで磨き上げてきた技がゼロリセットになる。そこでおしまいですから。

 

続けていくためにはやっぱりお客さんに喜んでもらわなければいけません。これって事業をする上でというより、生きていく上であらゆることに通ずることだと思うんです。感謝の気持ちや、人のことを考える気持ちを持ちつつ自然と携わって、たくさんの感動を世の中に送り出していきたいですね。

 

 

(文:宇野真由子/写真:宇野真由子)


株式会社日本総合園芸
〒636-0246 奈良県磯城郡田原本町千代19−1
https://nihon-sogo-engei.com/


 

アトツギベンチャー編集部

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