2019.02.01

【インタビュー】アトツギ娘の葛藤や恋愛事情のリアル・・それでもわたしがアトツギを志すワケ

事業承継というと男性(息子や婿養子)のアトツギをイメージしがちだが、女性(娘)がアトツギになるパターンも、近年少しずつ増えてきている。今回は、今まさに家業を継ごうと奮闘中である3人のアトツギ娘を集めた座談会を開催。アトツギ娘ならではの葛藤や覚悟、今後の挑戦について、ざっくばらんにリアルな声を聞いた。

 

座談会参加者プロフィール

 

 

新城恵(しんじょう・めぐみ)


30歳。家業は大阪府大阪市の建設業。建物を解体することをメインに、解体した建物から発生するコンクリートを自社工場で再生して販売する事業も行っている。4人姉弟(構成は女・女・女・男)の次女。大学卒業後、東京で働いていたが帰郷し、男性が圧倒的に多い建設業の中で、既存の業界慣習にとらわれず、自身の力を発揮しようとしている。

 

 

小嶋恵理香(こじま・えりか)

32歳。家業は京都府木津川市の織物業で、ふすま紙や壁紙を作っている。三姉妹の長女。大学を卒業後、東京のテレビ局で番組制作などの仕事をしていたが、実家から「お見合いをして家を継ぐため」に帰郷。これまでの事業にとどまらない織物業のコラボレーションに挑戦しようとしている。

 

 

 

小野未花子(おの・みかこ)

26歳。家業は兵庫県神崎郡の育苗業で、野菜の苗を育ててホームセンター等へ出荷している。ひとりっ子。イギリスの大学院に留学後、現地の会社で働いていた。現在はその子会社で取締役を務めながら家業も両立しており、今注目されているパラレルワークを体現している。

 

 

 

 

——  まずは自己紹介からお願いします。

新城 :新城恵(しんじょう・めぐみ)です。家業は建設業で、建物の解体がメインですが、解体後のコンクリートを自社の工場で再生し、販売する事業もしています

 

 

 

——  前職では何をされてましたか?

 

新城 :東京にあるWebサイトの制作会社で営業をしていました。面接のときに「将来的に実家に戻るかもしれない」と伝えても、「わかった」と言ってもらえたので、ここで働こうかなと。偶然にも建設業向けに営業をする会社だったので、お客様から話を伺う中で、業界の構造や知識も学んでいきました。

小嶋 :小嶋恵理香(こじま・えりか)です。家業は創業90年ほどの織物業で、ふすま紙と壁紙を作っています。前職は、東京のテレビ局でディレクターとして番組制作に関わっていました。

 

 

 

——  前職に就職したときから、アトツギのことは意識していましたか?

 

小嶋 :いえ、家業を継ぐことになるとは思ってなかったです。けれど、「結婚するために、30歳までには実家に帰ってこい」とは言われていて。時間が限られていたからこそ、早くディレクターにならなきゃという思いはありましたね。でも、将来的に実家に帰ることを言えば、昇進できなくなるので、周りには話せませんでした。

 

小野 :小野未花子(おの・みかこ)です。家業は、野菜の苗を育てて販売する育苗業です。苗は、ホームセンターに卸したり、実家の小売店鋪で販売したりしています。

 

 

 

——  小野さんは、海外で働いていたんですよね。

 

小野 :イギリスの会社で働いていました。今はその日本子会社の取締役もしつつ、家業にも入って、両立を目指しています。

 

 

 

——  みなさんの兄弟構成は?

 

小野 :ひとりっこですね。

 

小嶋 :三姉妹の長女です。

 

新城 :私は、4人姉弟の次女で、上3人が女、末っ子が男です。

 

 

 

——  新城さんは、弟さんもいるのに、なぜ家業を継ごうと思ったんですか?

 

新城 :周りもみんな、弟が継ぐだろうと思っていました。ただ、うちの弟は三女とも7つ歳が離れていて、私が社会人になった頃もまだ高校生でした。なので、世代間を埋めるためにも、女3人のうちの誰かは事務員として手伝ったりした方がいいのかなと思っていて。姉や妹と違って熱中できるものはなかったし、家族の近くで暮らしたいという気持ちも芽生えていたので、私が帰ろうかなと。そういった経緯があったなかで、弟が社会人になって2人で話したところ、アトツギへのモチベーションがそれほど高くなくて。

 

一同:あら。

 

新城 :ピンと来てなかったのかもしれないんですけどね、こんな覚悟で社長になれるだろうかと不安に思ったんです。それなら、私が継ごうと。もちろん、「アトツギは女性でもいい」っていう時代の変化もあったからこそ、そう思えたのかもしれません。

 

 

 

——  小嶋さんは、どんな経緯で継ぐことに?

 

小嶋 :私は三姉妹の長女なので、幼いときから「お前は、結婚して婿養子を取ることが仕事だ」って言われてきました。京都に帰るときも、周りには「お見合いのために帰ります」と言っていたし、そのつもりでした。

 

 

 

——  後を継ぐためではなく、お見合いのために実家に帰ってきたんですね。

 

小嶋 :でも、お見合いは毎日あるわけではないから、退屈で。最初は、家業に入って簡単な仕事だけ手伝っていたんですが、お見合いもうまくいかないし、もっとがっつり仕事をしたいと思うようになって。でも、周りには「お前はそんなに働かなくていい」と言われて。

 

新城 :「仕事するより、婿養子を探してこい」みたいな?

 

小嶋 :そう。何度もぶつかったけど、口喧嘩しても変わらないから、とにかく会社で自分の居場所を作ろうと一生懸命仕事に打ち込んだんです。3〜4年くらい働いてやっと、「お前を次期社長候補にする」と認めてもらいました。

 

小野 :私はひとりっこですが、「家を継げ」も「婿養子を取れ」も「小野家を守れ」も一切言われたことはなかったですね。ただ、幼い頃、家業のことは嫌いで。「農家の娘」と呼ばれるのが恥ずかしかったり、先生に「農家の娘やのになんで理科できひんの?」って言われて、理科が嫌いになったり(笑)

小嶋 :それ腹立つー!(笑)

 

小野 :将来、絶対に農家にはなりたくないからこそ、自分のやりたいことを極めなければと思っていました。だから、英語を勉強して海外で働こうって思ったんです。でも、海外で働く目標も達成できたし、家業を継ぐのもありだなあと思うようになって、自分がやりたいことを家業でも実現できるんじゃないかって構想が生まれてきたんです。

 

 

 

——  何かきっかけがあったんですか?

 

小野 :ロンドンの大学院時代のクラスメイトとの出会いですね。彼らの多くは、アジア諸国の経営者の息子や娘だったんですけど、家業をしている場所にとらわれずに、自分で住む場所や働き方を決めようとしていました。それまで私は、家業を継ぐなら地元に帰らないといけないとか、海外で働けなくなると思っていたんですけど、そんなことも無いのかなと思うと、可能性が開けてきたというか。今は子会社がある京都に行ったり、2カ月に1度はロンドンに行くなどしながら、複数拠点で働くことに挑戦しています。

 

新城 :すごいなあ。かっこいい。

 

 

 

——  アトツギ娘だからこそ、恋愛で苦労したことってありますか?

 

新城 :恋愛や婚活のハードルって、なんとなく高くないですか。

 

小野 :うんうん。

 

新城 :数年前に、真剣に婚活に取り組んだことがあって。いろんな男性に会ってみようと行動を起こす中で、家業をしている男性ともお話ししました。でもその方は、「将来、妻には専業主婦になってもらいたい」って言っていて。「あ、私には家業があるから無理だな」と思いました。あとは、転勤する可能性のある仕事に就いている男性との結婚は難しいのかなと考えたり。

 

 

 

——  会社に勤めている女性以上に、縛られるものはあるんですかね。

 

新城 :家業があることで、選択肢が狭まる事実はあると思います。

 

小嶋 :めちゃくちゃ共感します。私も、小学生のときから「長男の人は好きになっちゃだめ」って思ったりしてました。(笑)

小嶋 :理想の結婚像ってありますか?

 

新城 :一番の理想形は、結婚して、夫が家業を継いでくれることでした。

 

小嶋 :ですよね(笑)

 

新城 :でも、婿養子になりたい男性ってなかないないじゃないですか。

 

小嶋 :今、結婚相談所に登録してるんですが、「婿養子でもいいとおっしゃっている男性がいます」って連絡が来るの、半年に1度くらいしかなくて。

 

 

 

——  男性のプライドみたいなものもあるのでしょうか。

 

新城 :そうそう。それに、「婿養子でもいい」と言ってくれる人の中には、「自分の名字を継ぐことにこだわりはないから、どっちでもいいよ」という温度感の方もいて。そんな男性に社長を任せられないよなあ、と(笑)

小嶋 :私も、前までは「結婚したら、旦那さんにアトツギになってもらって、バリバリ仕事をしてほしい」と思ってたけど、最近は、私より高いモチベーションで家業を継げる人なんているのかなと思うようになってきた(笑)

 

新城 :それはあるよね。やっぱり、私たちは家業への愛着があるからね。愛着がなければ、業績が落ち込んだときにすぐ諦めそう。

 

小嶋 :わかる!うちは、父が三代目、私が四代目で、次に繋ぐことも自分の仕事だと思っているけど、そのあたりの意識が強く持てないかもしれないよね。

 

新城 :「会社売ったらよくない?」とか言われたらめっちゃ腹立つ(笑)

 

小嶋 :わかる!(笑)「売った方が儲るんじゃないか」とかって言われると、嫌だなあ。

 

 

 

——  小野さんはどうですか?

 

小野 :とりあえず、相手の国籍にこだわりは無いですね。でも、まだそこまで結婚のことを考えられていないです…(笑)

 

小嶋 :堅く考えすぎずありのままの方が、パッと結婚できるかもしれないし、そのままでいてほしいな(笑)

 

 

 

——  次に、アトツギ娘ならではの葛藤について聞きたいと思います。新城さんの会社は、男性社会ですよね?怖じ気づいたりしないですか?

 

新城 :もちろんあります。それは未だに悩んでいるテーマですね。私は現場に行って作業をするわけではないので、従業員さんに「現場を知らないヤツに何がわかる」と思われてしまわないような信頼を、どうやったら勝ち取れるんだろうかって考えます。

 

 

——  業界独特の慣習などもあるのでしょうか。

 

新城 :取引先との宴席が多かったり、いわゆる体育会系の礼儀みたいなものが重んじられたりしていて、女性の私には対応できないこともあります。一方で、建設業のアトツギが女性ってことだけで応援してくれる取引先の方もいるので、これまでの慣習に染まらずに違うやり方を模索したいなと思います。

 

小嶋 :私は、家業に入って働くなかで、社長と従業員さんの間に入って、従業員さんをフォローしたり、従業員さんの声を社長に届けたりすることが私の役目なのかなと思うようになりました。

 

小野 :職場の人間関係にも敏感になったり、従業員さんの気持ちが自然とわかったりしますよね。

 

 

 

——  女性は、従業員さんの気持ちを汲んだマネジメントが得意かもしれませんね。

 

小嶋 :従業員さんにとって働きやすい環境を整えていきたいです。今の社長が退任して私が社長になっても、一緒に働いてもらわないといけない人たちだから。

 

新城 :だからこそ私も、何かの制度に対して従業員さんから「変えてほしい」と意見があったときは、なんとか社長を説得しようとします。そうした姿を見せることで、信頼も得られると思うので。

 

 

 

——  ちなみに、今家業で社長を務められている、お父様との関係はいかがですか?

 

小野 :うちの父は、オープンマインドで少し変わった人なんですけど(笑)、「お前がやりたいと思っている事業と家業を繋げればいいし、ロンドンで会社を立ち上げるのもいいんじゃないか」などと提案してくれます。というのも、私で三代目なんですけど、その前は何十年も醤油屋をやっていて。祖父がベンチャー型事業承継のような形で今の育苗業を始めたので、事業形態を変えていってもいいと、父も思ってくれているんです。

 

 

——  目指す方向性も同じだから、お父様とぶつかることはないですか?

 

小野 :そうですね。私が出したアイデアに対してNoは言わず、「全部やってみなさい」って言ってくれます。

 

新城 :私も、提案に反対されることは少なくなりました。入社してすぐに、古くさく見えた名刺のデザインを変えようと提案したときは、いい顔をされなくて。それは、私が会社に貢献する前に、意見をしてしまったからなんです。だから、父の苦手なパソコン作業を手伝ったり、父が悩んでいる課題に対して「このツールを導入するのはどう?」と提案したりして、自分にできることで役立つうちに、認められて、意見が通るようになりました。

 

小嶋 :うちは、父にアイデアを取られますね。私が提案した時は却下されたのに、気付いたら、自分で思い付いたアイデアのように父がプロジェクト進めてくれてて(笑)

 

一同:(爆笑)

小嶋 :かわいいからまあいいや、と思うんですけどね(笑)結局、プロジェクトを動かすときには、私に主導権が戻ってきますし(笑)

 

新城 :大きな裁量を持って仕事をできるのは、アトツギのいいところかもしれないですね。

 

小嶋 :そうかもしれないです。あと、家業に入ってからの方が、父のことを好きになりました。それまでは、家業の内容も詳しく知らなくて、「お父さん、いつも帰り遅いなあ」って思ってたんですけど、実際同じ職場で働いてみたら、「こんなにちゃんと仕事をしていたんだ」って感心して。「従業員さんを守らなあかん」って言ってるところもカッコいいなあと。

 

小野 :わかります。家業から私の教育費や留学費を出してもらってたんだと気付いて、すごいなあと思いました。

 

小嶋 :ありがたみがわかりますよね。

 

新城 :うんうん。たまたま家業をしているこの家に生まれただけだけど、そのおかげで自分が教育を受けられたからこそ、恩返しをしたいって気持ちはあるかもしれません。

 

小野 :数年前、社員の方が社内結婚されて子どもを授かったんです。その方は家族以外で唯一の社員として長く支えてくれた方なんですが、そのときに「私が継いで、この人にずっとうちで働いてもらいたい」って、自然と思いました。

 

小嶋 :私もまだ実家に帰ってくる前、おばあちゃんのお葬式に出席したときに、「今の仕事と実家、どっちを守るか」って考えて、「私が実家を守らなきゃ」と思ったなあ。それに、私が帰ってきたことで、周りの方は「えりかちゃんが帰ってきたなら、小嶋織物は続くから安心だ」と思ってくれたみたいなんです。私がいい社長になれるかどうかはまだわからないのに、そう思ってもらえたことに驚いたし、帰ってきただけでも意味があったのかなと。

 

 

 

——  取引先の企業などは特に、「この会社には、未来までバトンを繋げるアトツギがいるだろうか」ということは、見ているかもしれませんね。

 

——  今後、アトツギとしてどんなことに取り組みたいですか?

 

新城 :建設業のイメージを変えたいです。どうしても、辛い・危ないといったマイナスイメージが先行しているじゃないですか。でも、「幼い頃から車や機械が好きだったので、今この仕事をしていてすごく楽しいです」と語ってくれる若者もいます。建設業のイメージを変えて、より多くの人にこの業界を選んでもらえるようになりたいです。

 

小嶋 :私は、従業員さんに仕事のやりがいを感じてもらえる環境を作りたいですね。仕事って、楽しいことばかりじゃないし、もちろん生活のためにするものだけど、何かやりがいや誇りを持って働いてもらえたら嬉しいなと。そのために、自分たちが作っている製品が世界に輸出されているってことを伝えていきたいなって思います。事業の展望としては、せっかく特徴ある織物を作っているので、アパレルとコラボレーションするなど新しいことに取り組んで、京都府木津川市発の織物ブランドの良さをより多くの人に知ってもらいたいなと。

 

小野 :私は、やりたいことがいっぱいあるんですが、ロンドンにあるアグリテックのアクセラレーターと連携して、農業に携わる人材を育成する場を作りたいなと思います。また、近所にある農業高校と連携して若者にも仲間に加わってもらいながら、家庭での野菜の育て方を教えるサービスを作るなど、事業を拡大していきたいですね。

 

 

 

——  ありがとうございます。家業への愛着を原動力とする、アトツギ娘のみなさんの活躍を楽しみにしています!

 

 

(文:倉本祐美加/写真:中山カナエ)

アトツギベンチャー編集部

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