2017.11.16
【イベントレポート】ベンチャー型事業承継講座 DAY1
~家業で起こすイノベーション~
さまざまな業界から集まったアトツギU34
2017年11月11日、U34限定ベンチャー型事業承継連続講座が始まりました。
さまざまな業界のアトツギ16名が、関西大学梅田キャンパスに集まりました。
講義のテーマは「ベンチャー型事業承継」。2017年、近畿経済産業局は、全国で初めて、中小企業の若手後継者をベンチャー政策の主たる対象に定めました。
この講義は、近畿経済産業局のロールモデル事業として実施されるため、聴講生、中小企業支援機関や金融機関、マスコミも多数参加。物々しい空気に包まれる中、まずは事務局から講義のレギュレーションを説明しました。講義で使うニックネームを各自つけてもらうなど、緊張感あふれる空気をアイスブレイク。
受講生の家業の業界も、町工場、印刷業、繊維業、食品製造などさまざま。でも「ベンチャー型事業承継」という言葉が、自分の心の中の何かに響いて、参加を決めた人たちです。つまり、このタイミングで、ここで出会ったことは必然。
この講義で大切にしているのは、目先のテクニック論や戦術より、長期的な視点、広い視野、高い視座。中小企業の若手後継者の皆さんに、次の30年を能動的に切り拓いていくための考え方を身につけてもらうことが目的です。
業界や家族のバックグラウンドは違えど、同じ世代の同じ境遇のアトツギ同士、ちょっと先の未来に想いを馳せながら、家業という重たいテーマを、明るく楽しい雰囲気で学んでいきます。
<ケーススタディ>斜陽産業こそ商機あり!?西陣織三代目が挑むウェアラブルコンピュータ市場
講師 ミツフジ株式会社 代表取締役 三寺 歩氏
第一部のミツフジ株式会社 三寺社長の講義でスタートしました。
講義では、ご本人も「初めて話す」という、事業承継時の先代との軋轢、業態転換の舞台裏、窮地を救った人々の存在など、一人のアトツギとして、現在に至るまでの経験を赤裸々に語ってくださいました。
この場にいた全員が息をのむ瞬間が何度もありました。
でも内容はここでは書きません。なぜなら、家業を継ぐ同じ立場の若者だからこそ特別にシェアしてくれた内容だったからです。
ふだんはベンチャー経営者として、自社のビジネス展開について講演経験も豊富な三寺社長ですが、家業承継についての自分の経験を他人に話すことなど、何のメリットもありません。
それでも、手痛い経験も含め、すべてを包み隠さず話してくれたのは、「家業を存続させたいと思うアトツギの強い意志こそ、窮地で科学できない力を発揮する」と、ご自身が一番ご存知だからかもしれません。
事業承継時には軋轢があったものの、先代が築いた「世界最強の糸」で、ウェアラブル市場で勝負する三寺社長の美学と気迫に、受講生の皆さんも圧倒されながらも自らを重ねていたようでした。
<発表>自己紹介、自社の創業時のエピソード、家業で覚えていること・・・
第二部は、受講生の発表です。
テーマは、「家業の歴史が始まった背景、そして家業にまつわる自分自身の原体験」。各自の発表に、ミツフジ三寺社長や事務局が、先代との関係や家業への考えについて質問するなど、「アトツギリアルあるある」を共有し、大いに盛り上がりました。
会社の数だけ、家族の数だけ、事情もドラマも歴史も違う。
そんな当たり前のことですが、これからの講義で、切磋琢磨していく仲間として、お互いのバックグラウンドに理解を深めてもらいました。
そして、この講義のキーワードは「化学反応」「掛け算」。
一見、自社の業界に関係ないと思えるような技術、ノウハウ、潮流にアンテナをはることこそ、ベンチャー型事業承継への第一歩。今後の講義では、受講生仲間のビジネスアイデアを自社のことのように考えてもらいますが、無駄にはなりませんからね。
この日のまとめとして、私から「ファミリービジネスの経済合理性」について簡単にレクチャー。
第二回目の講義に向けた課題は、「家業の現場を取材し、強みと弱みを調べてくる」こと。同族経営の強みも弱みも知ったうえで、この課題に取り組んでもらいます。
緊張した空気の中で始まった第一回の講義。
三寺社長による白熱講義や受講生による本音の発表の数々で、盛況のうちに終わりました。
第二回目(11/25)は、いよいよ実践講義です。
これからどんなドラマが巻き起こるのやら。
(文:近畿経済産業局「NEXT INNOVATION」事務局 プロジェクトリーダー 山野千枝)
山野 千枝
近畿経済産業局NEXT INNOVATION事業 プロジェクトリーダー、「ベンチャー型事業承継」伝道師、アトツギベンチャー界のゴッドマザー。大阪市が発行するビジネス情報マガジンBplatzを創刊から16年間編集長を務め、2500社以上のベンチャー・中小企業の取材に携わる中で、中小企業の世代交代のタイミングで起こるイノベーションに注目。「ベンチャー型事業承継」をテーマに、関西圏の大学で親が事業を営む学生を対象に教鞭をとる。座右の銘は「着眼大局着手小局、波に乗るのではなく、小さくても波をつくる」。AKY(あえて空気を読まない)突破力が持ち味。
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