2019.02.25

【インタビューVol.29】「想いを製品にして、社会に実装する」ものづくりのサービス業をめざす4代目アトツギの挑戦(JOHNAN株式会社/代表取締役社長兼CEO 山本 光世氏)

1962年の創業から主に大手メーカーからの受託製造を行ってきたJOHNAN株式会社。
祖父が創業し、四代目となる山本光世氏はベンチャー支援会社にて経営コンサルティングや飲食店のフランチャイズの経営指導を経験。その後入社し、M&Aなどの業務資本提携や新規事業投資、組織文化改革を行い、受託製造ビジネスから、開発から量産までを手がける製品支援ビジネスへ変革を主導。一般社団法人京都試作ネットの常任理事としても活動する。

 

 

 

Q 子どもの頃から家業を継ぐつもりはありましたか?

 

A 祖父からは「いつかお父さんや伯父さんを手伝いや」と人生で何度か言われたことがあったように思いますが、私は気にもとめていませんでした。

父は「自分のやりたいことをやりなさい」と子供の頃の私に何度か言っていましたが、それ以上に私は自分の人生は自分で切り拓くと言ったような強い自我が子供の頃からあったように思います。その為、関心の範囲にもありませんでしたし、継ぐつもりは一切ありませんでした。

 

大学へ入学した1993年のときは日本経済のバブル崩壊直後だったため、家業も苦しい状態で。奨学金制度を使わせて頂き、奨学生向けの寮に下宿しながら、新聞配達業務をしながら大学へ行っていたんです。大学では、合コンやテニスサークル活動で過ごす周囲に対して、私は新聞配達用のスーパーカブで通いながら、ジャージ姿で勉強と新聞配達ばかりをしていましたので、ちょっと変わった学生だったかも(笑)。

 

ただ当時の私には悲壮感など何もなく、「遊んでばかりいるあいつらには負けない!」と内心燃えながら、将来自分がやりたい目標の実現のためですから、充実していました。卒業後は、在学中に貯めた200万円を使って、目標としていた米国へ2年間留学しました。留学先では日本人同士でつるむのが嫌で、英語を絶対モノにしたいと思い、日本人に日本語で話しかけられても、英語で話し返していると、自然と自分の周りには英語で話す外国人ばかりになっていました。今思うとそこまでしなくてもと思いますけどね(笑)。とにかく自分の中でめざす目標に向かって尖っていた時期だったんだと思います。

 

家業を意識し始めたのは就職活動のため一時帰国し、初めて父から家業における新規事業の話を聞いたときでした。その新規事業とは、ビールサーバーを電解水で洗浄する機械の開発と製造に関することでした。今までは、飲食店などに設置されている生ビール用のビールサーバーは、ビールの品質を維持するために薬剤での洗浄が業界標準でした。

 

しかしこの技術は環境にも優しく、コストパフォーマンスにおいても優れていた電解水洗浄を用いるため、これはおもしろいなと感じ、留学先へ戻ってその機械を取り寄せ、学校の課題の研究としてテストマーケティングを行うことにしたんです。これがきっかけで、今までにないものを作って、経営上事業としても成り立ち、世の中にも役立つ仕事があるんだと知り、将来はいつかJOHNANに入社して、一社員として働いてみてもいいかな、とも思いました。

 

ですが、帰国後すぐにはJOHNANへ入社せず、また、研修の意味合いで勧められていた当時のJOHNANの主要顧客だった会社への就職も断り、まずは自分の力を自分の力で磨ける会社へ就職をしようと決めました。中小企業の経営者と直接話ができる、経営コンサルティングの仕事がいいなと思ってベンチャー支援や中小企業支援を行う会社へ入社したんです。

 

 

 

Q 最初の就職先で経験したことで、今のご自身の糧になったことや影響受けたことはありますか?

 

A 経営はあっけなく終わるということを目の当たりにしたことは、今の経営に対する心構えにつながっていると思います。

当時、就職先では経営コンサルタントとして、飲食店のフランチャイズの経営指導を担当していましたが、うまくいく会社もあれば、なかなか業績を上げられない会社もあります。経営の理屈と実際のオペレーションにはどうしてもギャップが起こるもので、それがどちらかに偏ってしまうと上手くいかないケースが多くて。あるとき、担当のクライアントが、日本のITバブルの崩壊などによる景気の悪化などから、その会社を倒産せざるを得なくなり、その会社の社長に会いに行ったところ、閑散とした雑居ビルの一室で呆然と立ち尽くし「すべて終わった」と言って涙を流していた姿が強烈で、今でも忘れられません。大変真面目で、勤勉で誠実な社長さんでした。

 

「どんなに頑張っても、会社は潰れるときはあっという間に潰れるんだな」と思い、中小企業経営の厳しさ、リスクへの備えを怠らないことの大切さを学びました。その一方で、私が勤めていたその会社自体がベンチャー企業で急成長していた会社だったこともあり、仕事も厳しく、目標の設定とその達成へのこだわり、チームワークの大切さを教えてもらいました。仲間と達成した時に飲むビールは最高に美味しかったですね。

 

 

 

Q JOHNANへの入社後、特にご苦労されたことはありますか?

 

A リーマンショックと主要顧客の業績悪化に伴う、自社のリストラ業務を伴う数年間の事業承継の期間です。

2008年、当時34歳だった私は事業承継の真っ只中にあり、専務の役職で、社長である父に代わって、自社のリストラ業務を指揮していました。リーマンショックによる激しい景気後退と、主要なお客様の業績の急激な悪化が重なり、一時は売上高が半分にまで激減しました。銀行借入による経営を長年行っているため、期間損益で数年に渡り赤字が出ると、資金調達が困難になり、倒産リスクが急上昇する為、速やかに工場などの拠点統合や閉鎖、人員整理、不採算事業からの撤退などを不退転の思いで実行しました。その過程は、取引業者や社員にとっても、大変辛いものでした。

 

それと同時に、今まで単年度の収支計画しか立ててこなかった会社でしたが、2009年に私が主導して今後3年間の中期経営計画を、人材育成、業務プロセス、顧客との関係性、そして財務の観点から計画を立てたんです。特に資産に対する方針は抜本的に見直しました。不稼働であっても不動産を所有する考えの強い父から大反対を受けて、よく口論になりましたが、「使わない土地は意味がない、これからはむしろ人に投資すべき」と説得し、最後は父も理解してくれて、時間を要する不動産売却を忍耐強く推し進めることができたんです。

 

2010年6月に私が代表取締役になり、父はそのタイミングで取締役からも降りて、相談役になった時でした。当時パンデミック対策のため銀行借入における当座貸越枠を増やしていた時期でしたが、2010年夏頃に、ある医療機器受託製造会社と資本提携の話が持ち上がりました。まだまだ、リストラクチャリング中で不安定な経営環境であり、資金は当初予定していた使い道ではなかったのですが、手元に資金があったことが功を奏し、それでも東日本大震災が3月に起きて、経済環境も不安定さを極めた感じでしたが、スピーディーにその企業を2011年4月に買収決断し、合意して、医療機器事業分野に進出をできたのは大きな収穫でした。

 

私が代表者になってしばらくはリストラ業務でしたが、初めての前向きな大型投資判断でした。このとき、まだ見ぬ会社の危機に備えることは機会に備えるができると実感しました。何事もタイミングが重要なので、フットワークよく動けるように普段から備えをすることが大切だと感じています。

 

 

 

Q 会社の今後の展望について教えてください。

 

A これまでの製造受託だけでなく、革新的な技術や事業アイデアを持つスタートアップの会社や、大手メーカーの研究開発部門を事業に加え、開発から製造、メンテナスまでを請け負う、「あなたの想いを製品にして、社会に実装する」ものづくりのサービス業を加速したいと考えています。

 

大手メーカーやスタートアップ企業などの製品の開発段階で、量産のしやすさを考慮した設計が行えるので、生産技術部門と綿密な調整を行い、作りやすい設計を行うことで、生産工程での不良品の増加や生産性の低下、歩留率の低下等の問題解決を担っていきたいと思っています。

 

また、京都大学との共同研究をしているんですが、災害用ロボットのアルゴリズムを使った生産現場の効率化をめざしたり、また、ロボット自動化関連のモーション・プランニング技術開発で実績をもつ米国の企業と、高度で柔軟なロボットシステムの構築を可能にする補完技術の開発・商品の市場化の加速をめざし、共同開発を行っています。産業用ロボットやそのシステム開発、医療機器関連の事業を加速して行きます。

 

既存事業である量産受託は、これまで以上にしっかりと取り組んでいきます。当社は、最後は量産して社会に据え付けるところまで実行することがミッションですから。難しいことですが、その困難を乗り越えるからこそ、社会に必要とされ続ける会社になれると信じて取り組んでいきたいです。

 

 

 

Q 家業での挑戦を考えているアトツギへメッセージをお願いします。

 

A 自分には家業の世界だけだと思い込まないよう、自分を追い込みすぎないように過ごしてほしいと思います。

 

家業を継いだ人は実感があると思うんですが、気がついたら目の前の仕事のことにのめり込んでしまいがちです。しかし、会社だけではなく、別の組織とのつながりをもったり、趣味の時間を確保してすごすことが大切です。

 

わたしはトライアスロンや子育てを楽しんでいますし、京都試作ネットの常任理事もしているんですが、経営から離れる時間があると、客観的に会社のことを新しい視点で考えられるようになったり、気持ちもリフレッシュされますしね。

 

また、アトツギは業界団体に参加することがよくあると思います。そのとき、受け身で組織に属するのではなく、役員などの何か責任のあることに取り組んでみることをお勧めします。経営者はみんな忙しくてさまざまな意見があるので合意を得たり調整したりする面で苦労をすると思いますが、まとめ上げる経験を通して、学ぶこともたくさんあると思います。他人は変えられませんが、自分の行動や意識は変えられますし、少なくとも社内の利害関係を超えた場所でやりたいことを実験するいい機会にもなりますしね。

 

自分を変えることができれば、未来を変えることはできると信じて取り組んでみてほしいです。

 

 

 

 


<企業情報>

JOHNAN株式会社
https://www.johnan.com/
〒611-0033 京都府宇治市大久保町成手1番地28


 

アトツギベンチャー編集部

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