2017.12.12
【イベントレポート】ベンチャー型事業承継講座 DAY3( 最終回)
~家業で起こすイノベーション~
家業の強みに掛け算する新ビジネス
11月11日に始まったベンチャー型事業承継講座。
親の会社に入った、もしくは入るかもしれない34歳未満の方を対象に、家業の経営資源を活用して立ち上げる新しいビジネスをテーマに学んでもらう3回連続講座です。
初回、二回目の様子はこちら
【DAY1】ベンチャー型事業承継講座~ケーススタディ&家業の歴史を知る
「これからの時代、賢さより熱量を出すべし」。
メイン講師、マッピー(松林先生)のメッセージで始まった最終回。
前回に出た宿題は、家業の強みに、自分の経験や好きなこと、関心があることを掛け算した新規事業アイデアを考えてくること。
さっそく全員前に出て発表です。
この講義のコンセプトである「Go beyond borders!(境界線を越えていけ)」を意識したのか、家業の事業ドメイン、業界、そして自分自身の能力など、知らず知らずのうちにつくっていた「限界」を取っ払ったアイデアが次々に飛び出します。
さらに、発表者に対してほかのみんなも、当事者の立場になってどんどん意見を出します。
この講義の鉄の掟「クレド」の中に、「できない理由を探さない」という項目があります。アイデアを拡げて絞って拡げて・・・を繰り返す。そうしているうちに、誰かに出したアイデアを「自分の業界だったらどうか」という具合に、新しいヒントがどんどん生まれます。
たった三回の講義を通して、一カ月前に初めて会った人たちが、それぞれの家業の歴史とそれぞれのアトツギのバックグラウンドを共有し、互いの新規事業について真剣に考える。業界も業態も違う誰かのために考えているうちに、自分のビジネスでアイデアの神様が降臨したりするのが不思議(笑)。
講義の最後は、この三回の講義を通して感じている「いまの気持ち」を全員が発表しました。
初回のテーマは、創業の歴史と自分自身のバックグラウンド。二回目は自社の強み。そして最終回となる三回目は「自分がこれから挑戦したいビジネス」。
講義はたった三回。しかもマニュアルめいたものを解説する講義も資料もナシ。ざっくり与えられたテーマをもとに、問いも答えも自分自身で導き出した一カ月。会社を永続させていくために、この自問自答をこれからずっと続けていくのが自分たちの使命だと、改めて感じてくれていたようでした。
私が今回の講座を企画するうえで、基本となった考え方があります。それは「会社を誰よりものこしたいと思っているのは誰なのか」ということ。
誤解を恐れずいうと、サラリーマン社長より、買収先から送り込まれた経営のプロより、そしてもっというと創業者以上に、会社をのこしたいと思っているのは同族のアトツギだと思うんです。
事業を拡大させるための戦術論とか窮地を乗り切るノウハウとか、頭のいい人も能力の高い人はいっぱいいるでしょう。でも家族からバトンを受け取るアトツギ以上に、会社をのこしたいと思ってる人はいないんじゃないか。
家業を存続させるために、世の中に必要とされる会社であり続けるために、新しいことに挑戦する。彼らが生み出すイノベーションには、「なぜこの事業をやるのか」ということに必然とストーリーがあるんです。
今回の「ベンチャー型事業承継」という言葉に、彼らの今置かれている状況や気持ちとかに、何かが反応して参加してくれたと思うんです。今回の彼らの縁が、成長への刺激と健全な危機感を共有してお互いに切磋琢磨できるような、そんな新しい形のアトツギネットワークになればいいなぁと思っています。
アトツギよ、Go beyond borders!
(文:近畿経済産業局「NEXT INNOVATION」事務局 プロジェクトリーダー 山野千枝/写真:中山カナエ)
山野 千枝
近畿経済産業局NEXT INNOVATION事業 プロジェクトリーダー、「ベンチャー型事業承継」伝道師、アトツギベンチャー界のゴッドマザー。大阪市が発行するビジネス情報マガジンBplatzを創刊から16年間編集長を務め、2500社以上のベンチャー・中小企業の取材に携わる中で、中小企業の世代交代のタイミングで起こるイノベーションに注目。「ベンチャー型事業承継」をテーマに、関西圏の大学で親が事業を営む学生を対象に教鞭をとる。座右の銘は「着眼大局着手小局、波に乗るのではなく、小さくても波をつくる」。AKY(あえて空気を読まない)突破力が持ち味。
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